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『先輩、お呼び立てして申し訳ありません。』
『いやいや、丁度締め切りが終わったところでね。次の原稿まで少し暇があって正直退屈していた所だったんだ。』
黒のタイトなスーツに身を包み先輩はやってきた。いつ見てもすらっと伸びた手足に甘いマスク。いやらしさを感じさせないブランド品を身に付け、少し甘い香水の残り香が男の僕でもクラッとくるいい男である。
『やっときたか。こっちだ。待ちわびたぞ。』
と警部。
こっちから民間に依頼して来てもらっているという感覚がこの人には本当にあるのかと疑ってしまう。まぁ、息子なんだから悪気はないんだろうと思うけど・・・。
『では、お話を伺いましょうか?天下の警部殿を悩ます原因となる事件のあらましを。』
『木津谷、説明してやれ。』
とぶっきらぼうに警部。
『はい。』
気分を害したどころかおもしろそうにニヤニヤしている先輩に説明する。まったく、親子仲良くしてもらいたいところだ。こっちが気を使う。
『今回の被害者は会社を経営している、一之瀬 学(いちのせ まなぶ)、男性です。死因は青酸カリによる毒殺です。
容疑者は4名です。ここまで絞り込めたのは理由がありまして、一之瀬が経営する会社の新商品のプレゼンがあり、被害者を含め5人のみがこのフロアにいたためです。企業秘密ということもあり、各出入り口、他のフロアへ行く階段、またエレベーター、それぞれに警備員が常駐しており外部からの侵入はありえません。怪しい人物の目撃証言もない状態です。』
『なるほど。それで。』
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