箱庭からの目撃者

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『私、約束の時間に少し遅れそうだったので千春に電話をしました。その時千春は今先生が帰ったとこって言っていたのを覚えています。だから、先生が千春に乱暴したとかそんなことはないと思います。』 『なるほど。参考になりました。有難う御座います。それでは続きを。』 先輩に促され次に結城さんが話し出した。 『その後、私は千春の部屋に向いました。さっき刑事さんに話したとおり、何度インターフォンを鳴らしても反応がなかったので、ドアを引っ張ると鍵が掛かっていませんでした。 おそるおそる中を見ると千春が倒れており、部屋が散乱しているのが目に入りました。 そして私は千春が体調を悪くしたのかと思いかけより、抱き起こしました。そのとき、初めて気がつきました。千春の体中が血で濡れていたことに・・・。呆然として、震えながら私は玄関の方に後ずさりしました。そして背中がドアに当たった瞬間ドアが開きしりもちをつきました。その瞬間我に帰って悲鳴を出すのがやっとでした・・・。 その時です。駆け出して行く足音が聞こえたのは。』 そういうと気丈にも彼女は山城をきっと睨んだ。 『結城さん、もう少し詳しくお願いします。室内は具体的にどんな感じでしたか?』 少し考えてから彼女は話し出した。 『千春が倒れていて、周りは明らかに誰かが引っ掻き回したように散乱していました。 服からカバンから全て。抽斗(ひきだし)をほとんど開けられていて窓際から玄関までぐちゃぐちゃでした。』 『何かなくなったものがあることには気がつきませんでしたか?』 『さぁ、そこまでは・・・私には判断しかねます。』
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