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『嘘をつかないでよ!!
あなたが千春を殺したんでしょ!結城さんより早くに外から窓を割って忍び込んで殺した!その後部屋を荒らして玄関から逃げた!正面から出ると人目につくから、裏の敷地から逃げ出したんでしょ!私、見たんだから!!』
今度は田代さんが怒鳴った。
『まぁまぁ。』
先輩は彼女をなだめてから話を促した。
『私は結局時間丁度に千春の部屋まで辿りつきました。その時です。あいつがマンションの植え込みから飛び出してきて走って逃げていきました。おかしいなぁと思い部屋の前まで行くと結城さんが座り込んで震えていたんです。彼女は全身血だらけでした。室内を見て何があったか把握したので、すぐ救急車を呼びました。それで今に至ります。』
『分かりました。』
先輩は目配せして僕を外へ連れ出した。
『どうも難しいね、あと少しという感じなんだがね。』
『どうしてですか?犯人は山城でしょ?』
『状況的にはね。でも否認してるし、嘘をついているようには思えない。』
『そうですかねぇ。』
先輩はずっと目を閉じて考えていた。どれくらい時間が経っただろうか?僕が声を掛けようとした瞬間、先輩が言った。
『確認したいことがあるんだ、木津谷くん。』
『はい。なんでしょう?』
『山城の持っていたカナヅチからは間違いなくガラスの破片が検出されたんだね。』
『はい。』
『それは彼の供述通り、外から割った跡だったのかい?』
『ええ。そうです。鑑識にも聞きましたが明らかに外から割った跡だったようで、割れたガラスの破片も室内に落ちています。ほら、あれですよ。』
と僕は先輩と一緒に現場に入り室内にあるガラスの破片を指差した。
『ほら、丁度紫のカーディガンの上に落ちている破片ですよ。』
『えっ!?』
先輩は急に絶句した。
『現場は誰も触っていないね?』
『え?はい。誰も手を触れていませんし、動かしてもいません。』
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