消えた記憶

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一晩中遊里に付き添い目覚めるのを待った。 朝方トイレに立ち、戻って来た時。 ドアの前で祈る。 どうか…目を覚ましていますように。 ガラッ!! 思い切ってドアを開けて思わず笑みが零れた。 遊里の目は開かれ。 その瞳は確かに俺を見ていたから…。 しかし。 「旦那様……」 「―――え?」 遊里は確かに呼んだのだ。 俺を、旦那様と。 「記憶…喪失?」 「ええ、事故で頭部にも影響が出ていますし…一時的なものだとは思いますがなんとも…。」 医者の話しでは治療法はないと言う。 その後すぐに行われた医者の質問に、遊里はこう答えた。 自分は17才で、今は夏休みだ。 昨日、俺の屋敷に越して来た。 その間チラチラと俺を見る遊里の目には…脅えがあった。 …昨日俺の家に…? 遊里の記憶は…俺達が暮らし始めたあの頃からがすっぽり抜け落ちている。 遊里が屋敷に来た日は、俺が遊里を乱暴に抱いた日だ。 ……どうなってる? よりによって何故あの日からの記憶がなくなったんだ。 遊里の脅えた目は、『旦那様』だった俺を見ていた目に間違いない。 俺の頭の中は混乱でめちゃくちゃだった。
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