消えた記憶

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医者との話しも終わり、俺は静かに病室のドアを開けた。 その瞬間に遊里が体をびくつかせ。 俺を見る。 「…遊里、具合は…」 「どういう事ですか!?事故なんて嘘でしょう?あなた…昨日私を乱暴に抱いて…その後私に何をしたんです!?」 恐る恐る聞いた俺の心は無惨にも砕かれた。 …俺が…暴力を振るったとでも言いたいのか? ショックで次の言葉が出てこない。 「…医者も看護士も…私が旦那様の妻だと言うんです。子供もいて…私は今28才だって…どういう事ですか!?みんなでグルになって私を騙して…」 「黙りなさい!!」 俺が微かに震える手を握り締めた瞬間。 聞き覚えのある声が病室に響いた。 慌てて後ろを振り返る。 「っ!!お義父さん!?」 「…やあ海斗君。」 いつの間にかドアの前に立っていたお義父さんは、俺に微笑んだ。 そしてその瞳が遊里を捉える。 「お父さん…聞いてよ!この人が…」 「遊里!!」 お義父さんに抗議しようと開いた遊里の口が呆気なく閉じた。 お義父さんは遊里に歩み寄り、悲しげに目を伏せる。
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