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あの忌々しい屋敷に、私は帰って来た。
大平さんはやたらと喜んでくれて、だけど…大平さんも確かに年をとっていた。
11年経っているというのはどうやら本当らしい。
旦那様は年が顔に出ないのか…あの日と同じ年だとしか思えなかった。
思い出す為にとこの屋敷に連れ帰られたものの…私には全く思い出せない。
私の部屋だと通された部屋もあの日と変わらないように思えた。
部屋をキョロキョロと見渡し、それを確かめる。その時。
コンコン。
ドアが優しくノックされ、恐る恐るドアを開けた。
「遊里、お昼ご飯が出来たそうだ。来なさい。」
そう言う旦那様は優しく微笑んでいる。
…この一週間、旦那様は優しかった。
何かと世話を焼いて、私が冷たく接しても笑っているのだ。
私の記憶の旦那様とは噛み合わなくて頭が混乱する。
「はい。今行きますので…」
短く答えドアを閉めた。
……11年前の私は何を考えていたんだろう。
自分を買い、酷いやり方で抱いた男を愛し、結婚して子供まで。
考えてもその私の気持ちが分からない。
だけど…。
旦那様に脅されていたのではないか。
無理やり結婚させられ、子供を産まされたのでは?
そう考えると合点がいくのだ。
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