思い出したい、思い出すのが怖い…

5/5
前へ
/79ページ
次へ
部屋に戻るとすぐに旦那様が部屋を訪ねてきた。 警戒しながらも部屋に入れると、旦那様の手にはたくさんのアルバムが抱えられている。 「ほら、この写真は遊真と斗真が二才の時動物園に行って…」 パラパラとめくるアルバムには、幸せそうに笑う私と…旦那様と子供達。 本当に幸せそうに…。 どの写真も私と旦那様は寄り添って写っていた。 なによ…これ…。 こんなの本当に愛し合ってるみたいだ。 こんなに幸せそうに笑って…私の涙はなんだったの? 旦那様に抱かれ泣いたあの日は…一体なんだったの!? それを許せたって言うの…? 確かに今の旦那様は優しい。 私を思いやってくれて、気遣ってくれて…。 だけどそれくらいであの日の事を許せるはずがないのに! 写真に写る私は、どんな風に旦那様を愛したんだろう? 何故許せたんだろう? 思い出したい。 でも………思いだすのが…怖い。 もう一度酷く抱かれれば、きっと思い出したくなんてなくなる。 旦那様を恨んだままでいられる。 このまま優しくされたら…私はなんの為にあの日傷ついたのか分からない―――。 ギシッ。 ソファーから立ち上がり、私はベッドに座った。 「遊里、アルバムはもう良いのか?………!?」 顔を上げた旦那様の目が大きく見開かれる。
/79ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6741人が本棚に入れています
本棚に追加