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「遊…里?何を…」
驚く旦那様の目にうつる私は、産まれたままの姿になっていた。
抱けば良い。
優しくしようとなんかしないで…あの日のように酷くすれば良いんだ。
「私は…その為に買われたんでしょう?どうぞ、旦那様。」
抑揚のない声で言うと旦那様の表情が曇る。
傷ついたような、悲しい顔だった。
「…確かに、俺はお前を買った。だが…あんなにも乱暴に抱いたのはあの日だけだ。…本当に。」
言って、私にそっと毛布をかける。
信じられるわけない。
あの日の旦那様は酷く恐ろしかった。
旦那様が私を優しく抱く姿など想像がつかない。
「…私は旦那様の妻になったのではないんですか?妻を抱けないと?」
責めるような口調で言う私に旦那様が首を振った。
「そうじゃなく、記憶も戻っていないお前にそんな事…」
「私が良いと言ってるんです。早くして下さい。」
苛立って強く言ってしまう。
旦那様は目を伏せた後、小さくため息をついた。
「…それで遊里の気が済むなら…」
覚悟を決めたのか、旦那様が私の横に腰を下ろす。
ギシ…。
軋むベッドに、少し怖くなった。
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