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「え!?休み取れなかったの!?」
子供達が夏休みに入る一週間前。
その報告は朝告げられた。
「ああ…仕事の調整をしていたんだが…大口の契約会社との間でトラブルが起きて…」
「そんな!だって…だって子供達だって沖縄楽しみにしてて…もうチケットだって…」
子供じみたワガママだと分かっていた。
だけど…私はその時どうしても我慢できなくて。
旅行なんて高校生の時親と行って以来行ってなかった。
海斗と子供達とみんなでの旅行。
私はそれが楽しみで仕方なかったんだ。
「仕方ないだろう?仕事なんだ。分かってくれ遊里…」
悲しそうな顔をした海斗が私の頬に手を伸ばす。
仕事?
そんなの分かってる。
海斗が社長だって事も。
だけど…だけど…。
私は手を避けるように顔を背けた。
「分かった。子供達には私から言うから…。」
「遊里…すまない。」
その言葉には何も返さず、私はとっとと部屋を出る。
子供達が学校から帰って来たら言わなきゃ…。
憂鬱な気分のまま、私は家を出た。
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