悲劇の始まり

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ドンッ!! 衝撃音と同時に私の体が弾き飛ばされる。 地面に叩きつけられた瞬間に視界が乱れた。 「ぐっ…」 体のあちこちが激しく痛む。 いや、思考が定まらず痛みなのかすらぼやけていて分からない。 薄れていく意識の中。 私は自分の携帯の着信音を聞いた。 私の握り締めていた携帯は、手を伸ばせば届く距離に転がっている。 海斗だ…。 メール…見なきゃ…。 海…斗…海………… 必死に伸ばした手は、携帯に届く事なく力尽きた。 海斗に謝りたかった。 早く会って謝らなきゃ。 ワガママ言ってごめんなさい、お仕事頑張ってねって。 そして、伝えなきゃ。 …あなたを…心から愛してると――――。 私が目を覚ましたのは、真っ白な天井の病室だった。 …声が出ない。 体があちこち痛む。 特に頭が…。 自分の口に当てられた酸素マスクを外したいのに腕も上がらなかった。 ガラッ!! 突然ドアが開き、一人の男が入ってくる。 ……うそ……。 それは一番会いたくない人だった。 「旦那様……」 「――え?」 私がそう呼ぶと。 旦那様は不安げに瞳を揺らす。 何故? 自分で旦那様と呼べと言ったのに。 そして私はどうして病院にいるの? 何故、体が動かないの……?
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