セイルの思惑

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だが、四代前に王国西の鉱山と港町の利権を手にしてから一気に台頭し、今や成り上がりとは他貴族がロプトセルトを皮肉った代名詞になっていた。 そして破竹の勢いでこの国の経済を一手に掴もうとしている男がこのセイル・ロプトセルト。彼は代々王国に仕えた貴族の伝統というしがらみに穴を開けた。 豪商の笑みにセイルはいくばくかの思考を読みとると、涼やかな顔をして答えた。 「とんでもないことをおっしゃいますね。」 そう。とんでもないこと。 セイルは舞台の上のセレイアを見上げる。 彼女こそはデルモーナで最も高貴な宰相、時の権力者マイス・グレンドルフの娘。
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