88人が本棚に入れています
本棚に追加
俺とピエロの距離は多少離れていたが、目線が合っているというのは感覚でわかる。
しばらくすると、ピエロは俺に笑みを浮かべたような気がしたが、俺は目線をそらした。
(なんか気味悪いなぁ……)
俺の様子が変だと気づいたのか、龍が声をかけてくれた。
「大丈夫か? ちょっと顔色が悪いぞ」
俺はピエロが気持ち悪いなんて、龍に恥ずかしくて言えなかった。
「そ、そうか? 全然大丈夫だよ」
俺たちがそんな会話をしていると、向こうから楓がジュースの入った紙コップを3つ持って来た。
「お待たせ、店が混んでて遅くなっちゃった」
俺と龍はパラソルがあるおかげでまだ涼しいが、彩乃は日陰がなかったせいか、額に汗をかいている。
俺は喉が渇いていたので、それを一気に飲み干した。
俺たちがそれを飲み終えると、龍があることに気付く。
「あれ、あのピエロどこ行ったんだ?」
俺と龍は辺りを見たがどこにもいなかった。
彩乃は何のことかわからず俺に聞いてくる。
「ピエロって何のこと?」
「なんか、この遊園地が最近ピエロを雇ったんだってさ」
「そうなんだぁ」
彩乃も俺と同じであまりピエロには興味がなさそうだ。というよりも、ピエロが好きなやつなんて龍くらいなものだろう。
俺たちは休憩を終え、ジェットコースター・お化け屋敷・観覧車などに行った。
遊園地の乗り物をすべて終えると、空はすでに茜色に染まっていた。
「もうこんな時間かぁ」
「今日は楽しかったし、そろそろ帰ろっか」
龍と彩乃は満足そうだった。
「すまん、ちょっとトイレ行ってくる」
俺は今にも小便が漏れそうだった。
「わかった、出口のとこで待ってるからな」
「漏らしちゃ駄目だよ」
彩乃は俺をからかうように言う。
俺は遊園地内にあるトイレに向かった…………
最初のコメントを投稿しよう!