プロローグ

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────1905年1月21日になり、その日はたまたま別の兵士が皇帝を護衛することになっていた。 皇帝は他の兵士と町に出かけていて皇帝の部屋には誰もおらず、あの兵士はどうしても皇帝の独り言が気になり部屋に入ってしまった。 兵士が皇帝の部屋をじっくり見るのは初めてで、部屋の広さには驚いたが、これといって珍しいものはなかった。 部屋の中央にあるパズルを除いては…… それはほとんどできており、あと1ピースあれば完成のようだ。 あとはめ込むのは真ん中の部分だけ…… どんな絵柄のものが入るかわからないがそこ以外は真っ黒の絵柄だった。 皇帝が帰って来る前に部屋をでなければならなかったので兵士は部屋をでることにした。 ──そして、あの事件の日になってしまったということなのだ。 事件が起きた後、皇帝は宮殿内にある病室にいたため、兵士はあのパズルが完成しているのではないかと思い、皇帝の部屋に入った。 あの時と変わらぬ風景…… パズルには最後のピースがはめられていた。 真っ黒な絵の中にはぽつりと浮かびぶ白い顔、赤く丸い鼻、唇は口紅で真っ赤に染められ、カラフルな三角帽子や服を着た人がいた。 皇帝はその頃病室でこう叫んでいたそうです…… 「あ、あいつが……あいつがこの私を……この私の身体を……。私はあんな指示をだしておらん。あいつの仕業なんじゃ……、あの白い顔の気味の悪いやつが……」 (白い顔……?) 兵士はあのパズルに描かれた奇妙な人物、あれのせいではないかと思ったのである…… 滑稽な格好をし、人を楽しませながら自分の欲望を満たすという意味で人々は『あいつ』のことをこう呼んだ…… 悪魔の化身『ピエロ』だと……
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