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とある森林の中――一人の男が朝を迎えた。
風に揺れる木の葉のさざ波のような音/小鳥達の静かな囀り(さえずり)――それらに満ちる空間の中、何の合図も予兆もなく男の瞼が開いた。
寝起きの唸りを上げると、辺りを見回す。
「……」
まだぼんやりとした思考が、とりあえず口に出す事を許したのは――
「……またか」
――半ば呆れた調子で呟いた男は、何を考えたのか、再び地面へと上半身を投げ出すみたいにして寝そべり始めた。
その傍ら――納刀すらされていない漆黒の長刀が、まるで添い寝でもしているかのように横たわっている。
「……さて」
しばらくそうしていた男は、やっとこさ起き上がると、左手で長刀を逆手に持ち、遅すぎる家路の道を歩んでいった。
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