第一章「変わった女」

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 ある学校、ある教室の放課後。ガランと空いた教室内に、ただ一人机に向かう男子生徒。    身成りは、背丈大体170センチ半ば。わりと整った顔立ちに、セミロングの無造作ヘア。現代っ子と言わんばかりの着崩した学ランを身に纏い、彼は机の上で作業をしていた。  椅子に座る姿勢は悪いとしても、机に向かう姿勢は褒めるべきであろう。おそらくは、受験の為に残って試験勉強をしているので――   「あ~くだらん」    …前言撤回である。 ”くだらない”この言葉からは、もう進んで勉強に励む精神は見られないからだ。  受験勉強でなければ、彼は今何をしているのだろうか。   「何が進路だ。夢ってなんだよ夢って。え?夢って何?つーか何?夢あるやつすげ~」    状況は大体つかめてきた。彼は、受験勉強はおろか、その前橋も渡らぬ段階、”進路”が決まっていないのだ。  季節はもう秋。他の生徒等はもうみんな進路が決まっていて、早い者では就職先や進学校の面接が決まっている者もいる。そんな超特急、超満員電車が行き交う中、何度も何度も乗り遅れている男、柄沢守くん。…いや、彼は乗り遅れてる訳ではない。〈乗ろう〉としないのだ。どうしてか?それは…次の行の彼をご覧下さい。 「俺は何がしたいんだ…?」  まるで自暴自棄になった人みたいな、そんな不可思議なことを言い出した守くん。 「夢って何?夢って。え?夢って何?夢って。」  大事なことなので二回言ったのだろう。  この世に生まれて来て、幼い頃から習い事や自分の好きなことを見付けてやってきた人は、この歳になる頃には夢の一つや二つはあるはずだ。でもこの物語の主人公、柄沢守くんはこれと言った趣味もなく、特に何もしてこなかった訳で、今まさにそのツケがドッシリと重く肩にのし掛かっている様子。 「あ~~…帰ろ。よし帰ろ。帰ってジャンプ再読みしよ。」  それでいいのか少年…とツッコミたくなる。  守は身支度をし、よいしょと机を離れようとした次の瞬間―― 「あれ?まだ居た。」 「?、ぅわ…」  声の主は守の担任「高見沢 幸恵」通称ユッキーと呼ばれる26歳独身。そしてロリ…童顔。教室戸から覗くように守を見つめていた。守は、半ば完全無視を通そうと、逆の教室戸へ移動を開始。だがユッキーは守をそのまま帰すはずはなかった。image=267416200.jpg
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