第一章「変わった女」

4/4
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ
 ユッキーも、嘘を吐いている訳ではない。おそらく彼女の気持ちは本当だろう。しかし今の守にとってユッキーがやっていることは一番やってはいけないことである。何故なら守は今のピンチな状態に自分でも十分気付いている。ユッキーがやっていることはそれをさらに追い詰めるような、そんな逆効果なことなのだ。だから守も本心ではないが、ユッキーに対して少しきついことを言ってしまっている。 「まぁ」  守は優しいトーンで声を発す。 「結局これは俺が決めることだから…ちょっと、もうちょい待って。」 「…」 「したら」  守は歩き始めた。 「あ…」  返す言葉が見出だせなかったか、ユッキーは守の背中をただ眺めていることしか出来なかった。  オレンジ色の夕焼けが周りの色彩を呑むように、校庭はオレンジ色ただ一色に包まれていた。そんな中、浮かない顔をした守くん発見。 「わかってる…わかってる…」  独り言。さっき言われたことを思いだし、無意識のうちに言い返してしまっているのだろう。 「――――はぁぁぁぁ~~~…」  大きく溜めたため息を吐いた。  どうだろう。みんなは彼の気持ちが分かるだろうか。彼には何も無いのだ。今までしてきたことも、これからやってみたいことも、何一つとして無いのだ。そんな人間は次に何を考えるだろうか。自分には何もない。ということは、存在意義が薄れてくる。何も出来ない。必要とされない。生きている意味がない。  守がここまで考えているとしたらそれはちょっと危険なことで、あながち、守がさっきユッキーと討論中言った「俺死ぬわ」は、冗談ではなくなってくる可能性が高いということである。  守はこの先どうなってしまうのか、早く続きを読んでみよう。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!