*自動販売機*

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その時はまだ、単なる同級生という程度だった。 たぶん向こうもそうだったと思う。 何にしようか……。 俺は購買にある自販機の前で、悩み、立ち尽くしていた。 この広々とした──二十人は座れそうな白い横長の机が6つ設置されていても、スペースが有り余るこの空間には、俺以外にたくさんの人がいる。 その机を使い、購買で買った飯を食べる者たち。 今ちょうど食事を注文し、席につこうとしている者たち。 俺はそのどちらにも当てはまらない。 毎日母さんの作った弁当を、教室でいただいている。 今日は飲み物を持ってくるのを忘れてしまい、それを買いにきただけなのだ。 よし……、これにするか。 財布からお金を取り出し、入れようとする。 しかし、その時歩いてきた誰かにぶつかり、小銭を落としてしまった。 そのぶつかった者は、謝りもせず、周りにいる友達らしき人たちと大きめな声で話をしながら、遠ざかっていった。 俺は呆れ混じりにため息をついた。 ぶつかってきた者は、たぶん上級生だろう。 今はまだ5月の始め頃で、高校に入りたての俺は同級生の顔など全然覚えられていないが、新入生のような高校生活にまだ慣れないという態度は見られなかったため、そう判断した。 とりあえず今起こったことは気にしないようにして、落としてしまった小銭の行方を探す。
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