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 4時に学校を出た僕が図書館に着いたとき、時刻は閉館時間の5時を少し過ぎてしまっていた。  別に坂井に引き留められたせいじゃなく、地下鉄の乗り継ぎが上手くいかなかったからだ。 「ごめん、遅くなった。待った?」 「すご~く待った。3冊分ぐらい」  図書館前の階段に腰かけて本を読んでいた真奈美は、あまり不機嫌そうでもなく言った。  僕の登場に、自転車置場から遠巻きに真奈美を見ていた大学生風の青年がそそくさと立ち去る。  声でもかけるつもりだったんだろう。残念ながら世の中はそんなに甘くない。 「お茶しに行く?」 「うん」  真奈美は本をディパックに入れながら立ち上がった。  読んでいたのはサリンジャーの〈ライ麦畑でつかまえて〉。僕が前に薦めたやつ。 「おもしろかった? それ」 「メルヘンなタイトルに騙されたわ」  まだ半分も読んでいないことを証明するような感想を真奈美が述べた。 「要するにあれって愚痴だよね、愚痴。優等生にもヤンキーにもなれない中途半端な男の子の」 「なるほど。そういう見解もあるか」  なんだかんだ言っても律義に最後まで読み通す真奈美のために僕自身の感想は伏せておき、僕らは図書館から程遠くないハンバーガーショップに入った。  
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