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僕はオレンジジュース、真奈美はアイスティーをオーダーする。
夕方の店内は学校帰りの学生たちで混んでいたけれど、タイミングよく奥の席が空いた。
「すごい偶然~。この席だったよね? 先月も、その前も」
真奈美が嬉しそうに言った。
毎月最初の金曜日、放課後の僅かな時間をここで過ごすようになって半年になる。
真奈美は僕より2つ年下の、この世でただ一人の妹だ。
「あ、そうだ。忘れないうちに言っとくけど、僕、来月は来れないから」
「え~? なんでぇ?」
「文化祭の最終日なんだ。実行委員になっちゃってさ。何時に帰れるか見当もつかないから」
僕の都合でキャンセルするのは初めてのことで。
「なぁんだ、つまんないぃ~。ただでさえ月にいっぺんしか会えないのに、丸っと2ヶ月も顔見なかったら忘れちゃうよぉ?」
いつもは気取りまくってるくせに、拗ねると途端に甘ったれる真奈美である。そういうところは昔と変わらない。
「ごめん。ちゃんと埋め合わせはするからさ」
「じゃあ、その次の日に会って」
「土曜日?」
「うん。朝からずうぅ~っと一日中」
ずうぅ~っと、の部分に有無を言わせないアクセント。
そう言えば、どこかに出かけたことは一度もなかった。ここを出た後も駅まで歩くだけで。
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