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 別々の家庭に引き取られた僕と真奈美が再開したのは、奇跡に等しい偶然が重なった昨年の夏休み──。  中学時代、陸上部に在籍していた僕は、大して実力もないのに地区大会の短距離走で繰り上げ入賞してしまい、自動的に県大会に出場することになって。  陸上を中学でやめた僕にとって最初で最後の檜舞台は案の定、やっぱり予選敗退だったんだけど。  その大会のプログラムに掲載されていた僕の名前を、たまたま友達と母校の応援に来ていた真奈美が見つけた。  生き別れの兄かどうか確かめたいという理由で男子更衣室に現われた真奈美と、着替えの真っ最中でズボンのファスナーに悪戦苦闘していた僕は、4年振りに涙の再会。  世にも稀なる美少女の乱入に、僕が他の部員たちからボコボコにされたことは言うまでもない。 「あ、気持ちわる。お兄ちゃんたらニヤニヤして」 「ちょっと思い出し笑い」 「中年オヤジみたい」 「放っとけ」  自分だって男子更衣室を片っ端から覗いて回ったくせに。  
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