10人が本棚に入れています
本棚に追加
「真っ直ぐ帰るの? 篠崎くん」
「いや、図書館に寄ってく」
後にも先にもクラスメートなんだけど、最寄りの同じ駅を利用している成り行きから、坂井と並んで歩く羽目になる。
どうせなら前か後ろを歩いてくれたらいいのに、坂井が選んだポジションは僕の左側。
ガードレールに区切られた歩道は狭く、ときどき鞄と鞄がぶつかる。
「ふう~ん。篠崎くんてば放課後も学習しちゃうんだ? 優等生ともなると気が抜けないっつうか、ま、あれよね」
「それは嫌味?」
「ううん。明日の土曜日を一人でどう過ごそうか悩んでる少女の独り言」
「あっそう」
無視できない距離で歩いているため、適当に相槌を返しておく。
「前から篠崎くんのこと、ちょっといいなぁ~なんて思ってたんだ、あたし」
「それも独り言?」
早い話がつまり、坂井は土曜日の暇潰しの相手をして欲しいと言っているわけだ。ちょっといいなぁ~程度の僕に。
最初のコメントを投稿しよう!