序章

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「真っ直ぐ帰るの? 篠崎くん」 「いや、図書館に寄ってく」  後にも先にもクラスメートなんだけど、最寄りの同じ駅を利用している成り行きから、坂井と並んで歩く羽目になる。  どうせなら前か後ろを歩いてくれたらいいのに、坂井が選んだポジションは僕の左側。  ガードレールに区切られた歩道は狭く、ときどき鞄と鞄がぶつかる。 「ふう~ん。篠崎くんてば放課後も学習しちゃうんだ? 優等生ともなると気が抜けないっつうか、ま、あれよね」 「それは嫌味?」 「ううん。明日の土曜日を一人でどう過ごそうか悩んでる少女の独り言」 「あっそう」  無視できない距離で歩いているため、適当に相槌を返しておく。 「前から篠崎くんのこと、ちょっといいなぁ~なんて思ってたんだ、あたし」 「それも独り言?」  早い話がつまり、坂井は土曜日の暇潰しの相手をして欲しいと言っているわけだ。ちょっといいなぁ~程度の僕に。  
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