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「まあでも今回の誓約はお前が中つ国の為になるようなことを一つでもなしえること。中つ国の民を脅かしていた大蛇を倒したという功績は認めない訳にはいかないわね」
「……………」
「それにこの天叢雲も、よく取り返してくれました」
アマテラスはそう言って微笑み、大事そうに剣を抱えた。
スサノオは窺うようにアマテラスの顔を見上げる。
「では姉上………」
「誓約は見事果たされました。本日、正式に高天原に戻ることを許します」
凛としたアマテラスの声が響き渡ると同時に、部屋の隅に控えていたクシナダ達三人は、わっと歓声を上げた。
その横でツクヨミも満足そうに笑みを浮かべている。
思わずのように隣にいたウズメと抱き合いそうになり、クシナダはハッと我に返って慌ててそっぽを向いた。
それを見たウズメはしゅんとうなだれる。
ウズメが男だと聞かされた時から高天原へ来るまでの間、クシナダはウズメと一言も口をきいていなかった。
怒るというよりもむしろ恥ずかしさで、まともに顔を見ることもできなかったのだ。
嫁入り前の身でありながら若い男性と湯につかったなど、もし父のアシナに知れたら親子の縁も切られかねない。
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