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「あいつにそんな義理はねーよ」
「どうしてですか。助けて頂いたんですよね、クシナダ様に」
「あいつは俺に薪割りさせようとしたんだぞ」
「でもクシナダ様はいいかたです」
ウズメの強い口調にスサノオは一瞬言葉に詰まった。
「クシナダ様はいいかたです。飾らなくて、真っ直ぐでお優しくて、とってもいいかたです。それはスサノオ様だってわかってらっしゃるはずです」
「………………」
「それに幻滅したなんて言われたままでいいんですか。ここでクシナダ様を助けて、クシナダ様の信頼を取り戻したいとは思いませんか」
「なんで俺がそんな媚び売るような真似………」
「媚びるんじゃありません!」
ウズメは語気を強くして、ズイッと身を乗り出した。
「私はクシナダ様を助けてあげたいんです。スサノオ様はそうじゃないんですか」
非難するようなウズメの視線を受け、スサノオは静かに嘆息した。
正直『助けたい』などと高尚な気持ちはなかった。
生まれて初めて会った下界の人間。
姫だと聞かされた時は信じられなかった。
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