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その姿を見てクシナダはぎょっとした。
こんな時間に一体何の用があって現れたのだろうか。
「…………な、何よ」
「用があって来た」
スサノオは遠慮なくズカズカと臥処(ふしど)の中に入ってきた。
さすがのクシナダもうろたえて身を硬くする。
「………夜這い?」
「馬鹿言え」
スサノオはにべもなく言った。
ムッとしてクシナダはスサノオを睨み付ける。
冗談で言ったことだが、あっさり否定されると面白くない。
「じゃあ何なのよ、こんな夜更けにっ」
スサノオはクシナダの向かいに腰を下ろして胡座をかいた。
「明日、高天原に行くぞ」
「…………………はい?」
なんの脈絡もない言葉に、クシナダはポカンとスサノオの顔を見つめた。
今、この目の前の男は何と言った?
タカマガハラニイクゾ……??
「だ、誰が行くの」
「俺とお前だ」
当然だろうと言わんばかりにスサノオはケロリと言ってのけた。
クシナダは思わず衾(ふすま)を跳ね退け、正座をしてスサノオに向き直った。
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