新居

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「みんな、ちょっといいかな?」 雅の声に、みんなの視線は一気に私たちのところへ。 そして賑やかだったリビングが、静かになる。 私は何が起ころうとしているのかまったくわからず、戸惑ってしまう。 でも私を見る雅の顔は、ずっと優しい笑顔だ。 「本当はちょっと早いんだけど、せっかくこうしてみんなが集まったから。」 雅がそういうと、猛さんが雅に何かを手渡した。 雅がそれを私の方へ差し出す。 箱? あれ? この箱って…。 雅は、ゆっくりと箱を開けた。 中には、ダイヤモンドが輝く指輪。 これって…。 「来年の秋には、結婚しよう。」 私は両手で口を押さえた。 まさか今言われるなんて、思ってもなくて。 結婚しようの一言が、こんなに嬉しくて感情の込み上げてくるものだなんて。 どうしよう。 泣きそうだよ。 「蜜葉?」 口を押さえたままなんの返事もしない私を、雅が心配そうに見つめる。 私は今出来る精一杯の笑顔で答えた。 「喜んで。」 私がそう答えた瞬間、周りからクラッカーが。 「「おめでとう。」」 そしてお祝いの言葉の嵐。 私はもう堪えることが出来なくて、涙が溢れだしてしまった。 雅は私の涙を拭って、左手をとった。 そして、薬指にあの指輪をはめてくれた。
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