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紫月が入りあぐねていると突然、背後から怒声が飛んできた。
「そこで何をしている?」
凛とした声だった。戦場でもさぞかしよく通るだろう。だが、今はその声を反芻している場合では無かった。
背中に感じる冷たい鋼の感触。
「聞こえなかったか? 何をしていると聞いたんだが?」
少し苛ついたような声
「……剣を下ろしていただけませんか? 決して怪しい者じゃありませんので」
ゆっくりと振り返る。
立っていたのは聞こえていた声を裏切らない凛とした顔立ちをした女性だった。
長く、艶のある黒髪を後ろで束ねたポニーテール、同じく意思の強そうな黒い瞳が鋭い視線を紫月に送っている。
どうやら剣を下ろす気は無いらしい。
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