序章 崩壊する日常

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「だからあの女は友達なんだって…」 金環の月の光が闇を照らす中、男はベンチに座り何かを話している…。 耳もとにある手には、真新しい濃い黒が映える携帯…。 携帯の話し相手は女性のようだ。男女間の問題は中々時間がかかるのかもしれない…。 「それは誤解なんだ…わかってくれよ」 小動物のように懇願する態度は正直信用性に欠けるも、うまくいけば関係修復のチャンスは生まれる…。 「俺に必要なのはお前だけなんだからさ…なぁ、聞いてる…?お~い」 相手側が無反応なことに違和感を感じ、何とはなしに携帯の画面を見る。 圏外。 仲直りのタイミングを失った男は、そのままがっくりとベンチにうなだれた。 「電波障害かよ…ちくしょう…」 誰に文句をつけるワケでもなくぼそりと呟いた…。 東京タワーの下、月明かりと街灯の灯りが夜の闇を明るく照らす。 キン…キキン…。 街灯の電球が寿命に近付いてきたのか、チラチラと乱反射を繰り返す。 街灯の灯りが1つ、また1つと乱反射を始め、一斉に街の光が消えた。 光が支配する街から、闇が支配する街へ…。
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