序章 崩壊する日常

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背中に感じる寒気に似た違和感…。 後ろを振り返り、見上げた先に拡がる光景は…この世のものとは思えないほど美しく、そして冷たい印象を抱かせる。 「…月が、青い…」 灯り1つない、漆黒の闇に包まれた世界に浮かぶ…淡い青色の月。澄んだ夜空の空気に、その淡い青は一層映えた…。 蒼い月…。この世の終焉を報せるかのようなこの異変は、徐々にではあるが確実に世界に更なる異変と暗い影を落とす…。 空に光る青い月に、丸い影がうっすらと写り込む。静寂の中に流れる低い不協和音を伴いながら…。 バババババババ…!! 一機のヘリコプターがこの異常事態に気付き、青く冷たく輝く月を撮影しようと近づく。 「皆様、見えますでしょうか…月が青く輝いています!」 ヘリに乗っているアナウンサーらしき男性が、東京タワーと月を背に喋り始めた。 「月が青くなる現象は前例がなく、また街の灯りも消えてしまい…まるで何か良くない事の前触れのような…」 ズンッ!! 何処かで何かがぶつかるような、低い音が1つ聞こえた。嫌な予感は確信に変わる。 ヘリの機体は操縦する事ができなくなり、下から吹き上がる風を全身に受けながら舞い落ちていく…。
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