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そこから愛紅の毎日は大変だった。 朝、早くからリハビリ。 最初はリハビリと呼べるリハビリではなかった。 座ること、立つことから始めた。 愛紅はよく泣いた。 赤ちゃんが癇癪を起こしてなくように。 それを午前中はおばさんや母さんがなだめ、学校が終わってからは俺が変わった。 部活は休部した。 コーチやメンバーは止めたが俺は愛紅と一緒にいたかった。 「愛紅。これはいぬ。い、ぬ」 絵本を見せ、発音と物を一致させていく。 退院後の愛紅の生活の為だ。 「いーうー」 「い、ぬ。」 「いーう」 あんまり抑えつけたらダメだ。 間違いを正さず、褒めていかなくてはならない。 俺もこんな風に育てられたと思うと頭が下がる。
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