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部屋に来たのは、神楽だった。
私は、神楽に、この泣き腫らした顔を見せたくなくて、ドアを開けたまま、後ろを向いた。
「杏ちゃん!?
その顔…どうしたの?」
「なっ…何でもないよ…。朝ご飯の誘いだよね…。
後から、行くから、先に行ってて!!」
「えっ?
でも…その顔…泣いてたんじゃないの?
なんかあったんでしょ?
ほっとけないよ!!」
神楽の優しい言葉が、何故か、私の胸を締め付けた。
「ごめん…。
今は、そっと、しといてほしいの…。
時期がきたら、ちゃんと話すから…。」
私は、そう言いながら、神楽の前で、泣き出してしまった。
「杏ちゃん…無理だよ…。
泣いてる杏ちゃんを…俺、置いていけないよ…。」
神楽は、そう言うと、私を、ギュッと抱き締めた。
“やめて…。
…神楽…私…今は…神楽に優しくされたくないよ…。
今、私は、和哉の病気のことで、いっぱいいっぱいなのに…
神楽に優しくされたら、どんどん、神楽を好きになっちゃうよ…。
私は、今、和哉の傍にいたいのに…お願いだから…今の私に…優しくしないで…!!”
私は、そう心の中で呟きながら、何も言えずに、ただ、泣き続けることしか出来なかった。
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