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社長が来ることを聞いて、私は、ビクッとなった。
だって、撮影中に、私情を挟んで泣いてたなんて、絶対に怒られるはず…。
社長は…いつも…
『女優や俳優は、撮影中、仕事中に、どんなに辛いことがあっても、役になりきらなきゃダメ!!
仕事中に、感情や私情を挟むなんて、女優も俳優も失格よ!!』
って言ってたから…いくら、和哉が、白血病になった…っていう事実を話しても、社長は、厳しいから、絶対に怒るに決まってる…。
「杏奈ちゃん…。
君が、撮影中に、あんなに泣くなんて…
本当に、どうしたんだ?
一体、何があったの?
私には…話せないことかい?」
私が、考え込んでいると、監督が、そう問いかけてきた。
「………ん…です…。」
「えっ?」
「私も神楽も、まだ、心の整理…できてないし…今は…お話できない…んです。
というより…私のことじゃないので…私の口から、監督にお話できる事じゃ…ない…んです…。」
私は、そう言って、また、泣き出し、その場に座り込んだ。
そんな私の肩を、神楽が、優しく抱いてくれた。
監督は、私と神楽の様子を、心配そうに、見つめていた。
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