第3話 儚き願い、勇気の先に…

5/8
前へ
/46ページ
次へ
アステル「あのッ!僕もリヒターと一緒に行きます。」 クレイズ「何だって?!」 そのとたん、シュナイダーが口を挟んだ。 シュナイダー「アステル、君をそんな危険な所に連れていくのは…」 そうだそうだ、と皆は口々に言った。 アステルは言う。 アステル「…シュナイダー様。ならどうして、リヒターだけそんな危険な場所へ行かすんですか…?」 クレイズが険しい表情でアステルに クレイズ「アステル。コイツはハーフエルフだ。魔術が使える…こんな危険な奴は、危険な所に行って、死ぬか、俺達の為に、罪滅ぼしするのがお似合いなんだよッ!」 リヒター「…ッ…」 -ハーフエルフなんていくら罪滅ぼししたって、変わらない、消えてしまえばいいのに- 過去は、 二度と変わらないのに… 俺は好きでハーフエルフになった訳じゃない… どうして判ってくれないのだろう。 どうしてッ…? その時、 アステル「…取り消してッ!」 リヒター「…アステル?」 アステルは怒りの眼で、シュナイダーやクレイズを見つめた。 アステル「…さっきから、皆リヒターだけ責めて…リヒターだけのけ者にしないでよッ!」 クレイズ「…」 アステル「…リヒターは好きでハーフエルフになった訳じゃない…。魔術を持ちたく無かったッ!!」 リヒター「…アステルッ…」 シュナイダー「アステル。落ち着いて下さい…」 アステルは怒鳴る。 アステル「皆からのけ者扱いされて…。ハーフエルフだから距離も置かれたリヒターは、たった一人だったッ!本当はそんなの、リヒターは望んで無かったのにッ!」 リヒター「アステルッ…もういい…」 アステルは、拳でクレイズを叩く。 アステル「何で皆、リヒターを責めるのッ…何でッ…なんでだよッ!」 ポロポロとアステルから涙が落ちる。 リヒターはアステルを止めようとしたが止まらない。 リヒター「アステルッ!もういい…」 アステル「リヒターは一人の人間として見てほしかったんだよッ!だからッ…だからッ!」 リヒター「アステルッ!」 アステル「だからッ!!」 リヒターが怒鳴る。 リヒター「アステルッ!止めろ!」 そのとたん、はっとして、アステルが言うのを止めた。 アステル「…ぁ…」 リヒター「…アステル。有難う。もう…いいんだ。」 グラッとアステルの身体が傾き、リヒターに寄りかかった。 アステル「…僕…」 リヒター「疲れたんだろ。早く休め。…俺達は出発の準備がいる。失礼するぞ。」 リヒターはアステルを支えながら、部屋を後にした。
/46ページ

最初のコメントを投稿しよう!

33人が本棚に入れています
本棚に追加