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☆
男――ロルグは店を去ったあと、今朝の追っ手に見つかることもなく、賑やかな街で穏やかな昼下がりを満喫していた。
「さて、そろそろ腹が減ったな。今日は大物だったし、いっちょ豪華なランチを頂くとしようかな」
ロルグは辺りにめぼしい店がないかキョロキョロする。いつもなら、庶民食堂の安くて不味いメシを食べていたから、久し振りのご馳走にロルグの頬が綻ぶ。
――と、その時、こちらに向かって走って来る足音にロルグは眉を八の字にする。
「まさかなぁ……流石にもう、諦めたと思ってたんだが……ツイてねえな」
ロルグは、まぁ仕方ないか、と盛大なため息を付くと、素早く足音とは逆方向へ走って行った。
どうせ、十数分もかからずに、追っ手は撒けるだろう、と高を括っていたロルグだが――。
「どういうことだ? 自警団のヤロー共、まさか賞金稼者(バウンティハンター)を雇ったんじゃないだろうな? これは並の奴の成せる追跡じゃない」
ロルグは通行人達を利用して右、左、と複雑な動きで逃げるが、追っ手もその後ろを的確に付いて来ている。
ロルグは焦った。もし仮に、追っ手が賞金稼者だとすると、戦闘に持ち込まれると勝目はゼロ。しかし、逃げ続けても埒があかない。どちらに転んでも分が悪い中悩んだ末に、ロルグは次に起こすべく行動を導き出した。
「いっちょ、接触(コンタクト)するか」
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