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やっと話が進むかと思えば、少女は淡々とロルグにそう告げ、踵を返す。そして、またもや「わふー」と欠伸をしながら去って行った。
当のロルグはというと――
「ふーん、本当に俺のファンだったのか……」
そう呟くロルグの両手によって、逆三角形の形をした布切れが広げられている。その布地にはハートマークの中に『ロルグ様命!』と書かれたロゴがあった。
「今時の女の子もこんなパンツを履くんだな……あいつだけかもしれないけど。返し損ったが、パンツが一枚無かろうと風邪は引かないだろうな。よし、帰るか」
今日のうららかだったお日様は時を経ることによって朱く彩られ、その夕日に向かって歩き出すロルグの後ろ姿は、何故だか幻想的だった。
因みに、いつの間に盗んだのかは知らないが、ロルグの手には確かに女性の下着が納められていた。それこそ盗賊と呼ばれる所以なのであろう。
☆
「――ひっぐ! あれ? 風邪でも引いたんでしょうか。なんだか下腹部も冷えてますし、早く宿屋に戻りましょう」
少女には、早く宿屋に戻る前に、下腹部の冷えを防ぐ為の下着が無くなっている事に気付いてほしい。まあ、それは無理な願いだろうが。
宿屋に着くまでに、一度も風が吹かなかった事が、少女にとってせめてもの救いだったという事は、言うまでも無かった。
―To be coninued―
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