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☆
「よし、もうすぐお昼ですね。それにしても、昨日、私の大切なロルグ様パンティを落とすとは大失態です。まぁ、たくさんストックがあるので良かったですけど」
とある宿屋の一室で、一人の少女が椅子に座ったまま、時計と睨めっこしながら独り言に耽っている。自分で大失態だと思うのなら、その事を口に出すのは極力控えてほしいものだ。
そして時計が丁度、十二時を差す。その途端、少女は立ち上がり、目を瞑ったまま手で十字を切った。
「そろそろ、行きましょうか――“交代”」
少女がその言葉を口にして僅か二、三秒。
「それではぁ、エルールぅ、行っきまぁ~すぅ」
先程までの、ずっと時計と睨めっこする様な彼女は、気の抜けた掛け声と共に扉を開け――
「んぎゃっ! ……この扉はぁ、押し戸じゃぁ、ないんですねぇ」
えへへぇ、失敗ですぅ、と照れながらも、少女は宿屋を出て行った。掛け声もさる事ながら、頭のネジも少々抜けている少女である。しかし、宿屋から出た少女の足取りはとても軽快だった。
さてさて、何度か名前も出てきたので、そろそろ少女の事を名前で呼ぶとしよう。
少女エルールは足取りが軽いから、と調子に乗って、スキップをしては転んでまたスキップをしてはまた転んでの繰り返しでロルグのもとへ向かって行くのであった。
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