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「そうです。ただ単に追跡できたとしても、所在が分からなければ意味はありません」
「――それで探索(サーチ)って訳か」
「はい、その通りです」
――と、ここまで話した途端、ロルグがスッと立ち上がった。突然の行動にエルールも「どうしたんですか?」と首を傾げる。
「まぁ、知りたかった事は聞けたな。あと、今から用事があるから、詳しくはまた次の機会にしてくれ。……ほらよ」
ロルグはそそくさとエルールに手を差し延べる。これまたエルールは「どうしたんですか?」とその手をじっと見つめる。
それに対してロルグは、反対の手で頬を掻きながら呟く。
「ほら、昨日の約束……まだだったろ?」
少し照れくさそうに言うロルグのその行動にエルールは、少し目を見開いて驚くが、直ぐに表情を戻して一言。
「それでは、遠慮無く…………掌圧制裁」
「ん? 今、なんか言っあだだだぁ"ぁぁあああ!!」
宿屋での事を引きずっているのだろうか、エルールは、差し延べられたロルグの右手を思いっきり握り締めた。余りの激痛に、ロルグは周りを一切気にせずに悶える。
「痛ただだだだだだ! おい、指はそっちに曲がらないぞ!? ってか指先の感覚が――」
ロルグの右手が解放されたのは、指先の肌の色が人外なまでに紫色に変色した後の事であった。
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