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☆
庶民食堂を立ち去り歩くこと十数分。若干斜めに傾いた大きな看板がトレードマークの店『依頼受付所~ハンターズギルド~』の入口でロルグは歩みを止めた。
「さあて、俺の思惑通りならば、差が二万までに縮まる筈なんだがな……」
そう言って、店の前で佇むロルグの姿は、校門の前で入学試験の結果の可否を心配する学生のようだ。察するに、ロルグにとって今から起こる出来事は、かなり重要らしい。
「……うっし、行くか」
気持ちの整理が出来たのか、一呼吸おいたロルグは店の扉に手を掛け、思いっきり扉を押して開く。
店内は、いつもと違った賑わいをしており、カウンターを中心に人集りができていた。
「ちょっとごめんよ。おっと悪いな。そこ、通るぞ」
ロルグは人込みの中を右へ左へとかき分け、カウンターへと近付いて行く。途中途中に、厳つい罵声が飛び交っていたが、ロルグは気にせずに前へ前へ進んで行った。
人をかき分け続けて、ようやく十列目に到達した辺りでロルグはなんとか最前列に並ぶ事ができた。人々が行列を作ってまで注目する先のカウンターには、とても大きな張紙が一枚。
威圧感を放ちながらそびえる張紙を、ロルグはグッと固唾を飲み、ゆっくりと見上げる。
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