33人が本棚に入れています
本棚に追加
男は、追っ手を撒いたことによる油断から、トロールの肉から発する臭いと天馬の角から発する輝きのことをすっかり忘れていたのだ。
追っ手に捕まらない様にと男は慌てて天馬の角を麻袋に入れ直し、ドタバタとその場を後にするのだった。
☆
「はぁ、はぁ、はぁ……なんとか辿り着いたな」
男は呼吸を乱しながらも、看板に『依頼受付所~ハンターズギルド~』と書かれた店の扉を開き、倒れ込むように入っていった。
店内はアルコールや煙草、そしてモンスターたちの血生臭さで充満していて、内装もあまりよろしくはない。分かりやすく言えば、良い子は来ては行けませんよ的な店なのだ。
そんな薄汚れた店内をボロ雑巾の様に這いながら、男は必死の思いでカウンターに手を掛け不快臭で充満した口を開く。
「はぁ、はぁ……おい、アンナ居るか?……はぁ、はぁ」
「何よ?」
男の呼び声に導かれ、一人の女性が棘のある言い方をした言葉と共にカウンターの奥から姿を現した。
その女性の容姿はと言うと、まず目に写るのが、赤色で若干パーマ気味なセミロングの髪。そして少し吊り上がった赤い瞳に、綺麗に伸びる鼻筋。最後に真っ白な肌とは対照的な真っ赤な艶のある唇。
全体的に見て、美人の部類に入るその女性は、どこと無く姐御肌を感じさせるオーラを纏っていた。
最初のコメントを投稿しよう!