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男にアンナと呼ばれる女性は、男の目の前に来るなり、顔を歪めだす。
「ちょっと、アンタ臭いわよ? 一体、何を食べたっていうんだい?」
男に向かって発したアンナの言葉は、誰しも少なからず傷付くだろう。だが、男は特に気にも留めずに彼女の疑問に答える。
「ん? トロールの肉だけど」
「はぁ……ついに世界三大絶味まで食べちゃったのかい。アンタもゲテモノ食いにまで落ちぶれたもんね」
男の言葉にアンナは、少々呆れた様子。そして彼女が零した言葉は、男の勘に触るものであり、それ故、男は直ぐさま口を開く。
「いや待て、それは違うぞ。臭みが強いのが難だが、旨く臭みを除けば最高級の肉に――」
「もういいわよ。それで今回は何を持って来たの?」
世界三大絶味について語る男だが、すっかり冷めたアンナの言葉により遮られ、本題へと戻される。
そんな半強制的に戻された本題に、今まで大した変化を見せなかった男が、途端に口角吊り上げた。
「これを見てビビんなよ?」
得意気な振る舞いで懐から麻袋を取り出す男に対し、アンナの表情が強張る。緊張していても好奇心には勝て無かったのであろう、彼女は恐る恐る首を縦に振った。おそらく覚悟が出来たという、彼女なりの意志表示だろう。
その様子を確認した男は、自分でも気付いている程、ニヤけた口を開いた。
「さぁ、お宝とのご対面だ」
男の言葉と共に麻袋の紐が解かれ、中身が姿を現した。
暫く……と言っても二、三秒程度なのだが静寂が訪れる。しかし、その二、三秒という静寂はアンナの言葉によって終止符を打たれた。
「――は?」
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