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ああ、こういうのには関わるべきじゃないな……と何事も無かったかの様に店から出る男。しかし、この男こそが『ロルグ』――張本人なのである。
「おーい、お嬢たん。ロルグならこの奥にいるぞぉー」
先程まで店内で延々と酒を呑み続けていたガラの悪いスキンヘッドの男が、少女に向かって手招きをしながら大きな声で呼び掛けている。その表情はいやらしさの模範と称しても良いほどニヤニヤしており、グロテスクとは違った意味で男の吐き気を促した。
「えーっとぉ、どこですかぁ?」
疑うことを知らないのだろう、少女はトテトテとスキンヘッドの所へと駆けて行く。そんな、あの娘これからヤられちゃいますよ的な光景を店の外から見ていても、何のアクションも起こさない男。
「何でかって? そりゃぁ、今日はもう面倒事は御免だからだよ。あぁ、疲れた疲れた」
妙な独り言を口にした男は踵を返し、だるだるオーラ全開でのろのろと店から離れていった。まさに、典型的な見て見ぬフリを実践してくれた男だった。
☆
男が店から去って間もなくの出来事。
スキンヘッドのもとへ辿り着いた少女の目はキラキラと輝やいている。その輝きはスキンヘッドの反射光とは比では無かった、と周囲の男達は語っていた。
「それでぇ、ロルグさんはぁ、どちらですかぁ?」
「アイツならそこの個室で寝てるよ。さぁお嬢たん、こっちにおいで」
「わかりましたぁ~」
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