届け物

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「止めろ。母さん、落ち着けって」 俺が母と美羽を引き離し、ようやく事態は収まる。母は息を荒くし、俺たちを無視すると、台所に向かい食器を片付け始めた。俺は美羽を部屋に連れていって、切れた唇にハンカチを当てた。 「兄ちゃん、早く逃げよう」 美羽は身体も声も震えていた。美羽の顔は腫れ、唇からは血が出ていて酷い有様だった。 「うん。もうちょっと待って。美羽、明日は学校を休みな。兄ちゃんとどこかに行こう」 「お、お母さんに、怒られる」 「大丈夫。兄ちゃんがついてるから。な?」 「うん」 翌朝、美羽と一緒に家を出た俺は、美羽のランドセルを裏庭の木の裏に隠し、美羽を自転車の荷台に乗せ近所の公園に向かった。 ホームレスと思しき男が、ベンチに座って鳩にエサをばら撒いていた。朝の、平日の公園にいるのはその人だけだ。俺は鞄を持って男子トイレに入ると、制服から平服に着替えた。平日に制服姿で小学生とぶらぶら歩いていては、補導されかねないので、それを見越した上で持ってきた。
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