届け物

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自転車に戻り、美羽を再び荷台に乗せてペダルを漕ぎ出す。 「どこ行こうか? どこか美羽の行きたいところある?」 美羽は俺の背中から腰に腕を回し、顔をぺたりと背中にくっつけると 「兄ちゃんと一緒なら、どこでもいい」 とか細い声でいった。返す言葉は見つからなかった。 俺はペダルを漕ぎ続けた。どこに向かっているのか、自分でもよくわからない。目的なんてない。ただただひたすらに自転車を進めて、どこまでも続く道を適当に走っているだけだ。美羽はずっと俺の背中にへばり付いている。一言も喋らない。けれども、背中に当たる美羽の呼気が、俺を安心させる。 「美羽は将来何になりたい?」 いって、どうして俺はこんなことを聞いてしまったんだろうと思った。 「わかんない。でも……」 美羽はいい淀んだ。 「でも?」 「お母さんみたいには、なりたくない」 美羽の腕にきゅっと力が込められた。美羽は母を恨み、そして母の暴力を一生許すことはないだろう。身体だけではなく、心まで傷つけられて、美羽はもう心身ともにボロボロだ。 「美羽なら大丈夫だよ」 そう答えてやることしかできなかった。
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