届け物

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「俺が注文した品だから俺が出るよ」 「そう。何を注文したの」 「受験に使う参考書だよ。一昨日、ネットで本を見てたら、使えそうな教材があったから思わず注文しちゃって」 咄嗟に出た嘘を、母は特に怪しむことなく、リビングに引き返した。 ドアを開けると、配達員には相応しくない格好の男が、四方三十センチくらいの段ボール箱を抱えて立っていた。黒いスーツを着ており、サングラスをかけていて、ワックスで固めた短い髪のおかげでツンツン頭になっていた。俺は瞬時にウニの棘を連想した。それに男の格好は、ハリウッド映画に出てくるエージェントみたいだ。 「あなたが仲西疾風様ですか」 男の声は、格好とは裏腹に穏やかだった。 「あっ……はい。そうです」 「こちらが例のお届けものになります」 俺は男からダンボールを受け取った。箱はさほど大きくないのに、ずしりとした重量感がある。 「エスケープが始まるまでは、他人の目の届かないところに置いておいてください。所持していただいても構いませんが、エスケープ開始までの発砲と殺人はかたく禁じております。もし違反しますと、即刻失格になりますので注意してください。それでは」 男は事務的な口調で喋ると頭を下げ、踵を返した。
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