脱却!

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「何だこれ」 思わずそんな言葉が洩れる。まったく現実味のない、嘘らしくて、くだらない内容だった。悪戯だとしか思えないが、少しばかり興味が沸いたのも事実だった。参加を決めたわけではないが、俺は紙切れをポケットに突っ込み、美羽の手を取った。 「帰ろうか。お腹空いたろ」 優しく微笑みながらいったが、美羽はびくりと震えた。家に帰りたくない、お母さんが怖い、とぎゅっと握り返してくる美羽の掌から伝わってくる。今にもまた泣き出しそうな顔だった。 「もうすぐでお父さんも帰ってくるから」 美羽はおそるおそるといった様子で顎を引いた。 美羽と一緒に部屋に入ると、早速パソコンを立ち上げた。うそ臭いけど、興味に唆され、一度例のサイトを覗いてようと思った。参加登録をするかどうかはまだわからない。 インターネットに接続し、URLを打ち込んでエンターキーを押す。ブラックホールを思わせる暗い画面の中に、「エスケープ」と赤い文字が浮き上がってきた。文字が明滅し、数秒後、塗り立てのペンキが滴り落ちるかのように、文字が崩れた。血を連想させるような演出だった。美羽がぎゅっと俺の袖を握る。 「こ、怖いよ」 「大丈夫。ただのフラッシュだから」 最初に年齢確認を求める表示が出てきたので、「はい」をクリックした。画面が切り替わる。左側のメニュー欄に、「ルール」というタグがあったのでクリックしてみた。先ほどの紙切れの内容に加え、エスケープに関するさらに詳しい内容が書かれていた。
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