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そこには誰の姿もなかった・・・。
「橘ぁ・・・」
惣一郎は泣き崩れた。
「惣・・・キツイかもしれないが・・・先を急ごう・・・もしかしたら、もう避難してるかも知れないんだから・・・」
「分かってる・・・分かってるんだ・・・分かってるけど・・・なんで・・・なんでだよ・・・」
惣一郎は静かに立ち上がり、部屋を後にした。
再び3人は走りだした。
あと少しで、七瀬の部屋につくところだった。
ガタガタガタ・・・・・
余震が3人を襲った。
揺れは大したことなかったが、今の3人の恐怖心を煽るには充分だった。
「うわぁ・・・上に気をつけろ・・・」
前を走っていた隆夫が立ち止まって言った。
その時、
「きゃぁぁぁ-!!」
向う側から女の叫び声が聞こえた。
「誰か居るぞ!!」
「誰か居ませんかぁ!?」
別の女の声が聞こえた。
「誰だ~!!揺れがおさまったらそっちに向かう!!」
隆夫は声に応えた。
「早く!!1人が瓦礫の下に!!」
向うで女も応える。
「あ・・・橘?・・・」
惣一郎はそう呟いた。
「惣・・・お前・・・」
隆夫はそれ以上何も言わなかった。
そして、揺れがおさまり3人は声のした方へ向かった。
そこは、七瀬の部屋だった。
「大丈夫か??」
「早く手伝って・・・このコが瓦礫の下に・・・って風祭(カザマツリ)くん?」
「たっ橘・・・?なんでここに・・・?」
隆夫は驚いて応えた。
「橘、無事だったんだ・・・」
惣一郎も安堵の表情をした。
「小林くんも・・・なんで・・・あ・・・そんな場合じゃ・・・この下に女のコが・・・」
その瞬間にヒロが、瓦礫をどかし始めた。
「一度には動かせない、少しずつ・・・」
「あぁ分かった・・・。」
「君は誰?怪我はない?」
惣一郎は瓦礫をどかしながら聞いた。
「私、隣のクラスの七瀬瑞穂です・・・隙間に入ってるから大丈夫です・・・」
「七瀬!!」
惣一郎は驚いた。
ヒロは気付いていたのだ。
「他の人は・・・?」
「分かりません・・・でも、全然声しないから・・・」
「探した方がいいな・・・」
惣一郎がそう言いながら、部屋を探そうとすると、腕を掴まれた。
「橘・・・?」
橘は、静かに首を横に振った。
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