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そして、ゆっくりと部屋の奥に目を送った。
惣一郎は、その方向に目を向けると・・・
「あっ・・・」
惣一郎は目を逸らして、再び橘を見つめた。
「今は・・・まだ・・・」
橘は声を殺して、そう呟いた。
「あぁ・・・わかったよ」
惣一郎も声を殺して応えた。
「七瀬、足とか挟まれてないな?」
隆夫が七瀬に確認する。
…トントン…
「…うん…大丈夫。動くよ…」
七瀬は足を動かしながら応えた。
「よし…いいか…持ち上げるぞ…」
七瀬を閉じ込めていた大きな瓦礫を男3人で持ち上げる…。
「引っ張るよ!」
橘は七瀬の腕を引き身体を掴み引っ張り出した。
「は…はやく…してくれ…」
隆夫が苦しいそうにしゃべる。
「待って…もう少し…」
橘は七瀬を引っ張りながら、後ろに倒れ込んだ。
「いいか…離すぞ…1、2、の、3…」
ドスン!!…
「はぁはぁ…」
3人はその場に座り込んだ。
「ありがとう皆…」
「さぁ…早く逃げましょ…ここに居たら危ないから」
橘は立ち上がり、
「3人共悪いけど、休むのは後よ…」
「わかってるって…行くぞ隆夫…ヒロ…」
3人が立ち上がりかけた時、
「待って…」
七瀬が呼び止めた。
「七瀬、なんだよ?」
隆夫が疲れ果てた息遣いで聞いた。
「私の友達が…ずっと返事ないし…私は気を失ってないはずだから…まだ居るはずなの…」
辺りを見回しながら七瀬が応えた。
「……」
重い沈黙がただよう。
「七瀬…落ち着いて聞…」
と、惣一郎が話してる途中で…
「ひっ…ぃ…いやあぁぁぁぁぁぁぁ…」
七瀬は同室の2人の変わり果てた姿を見て、その場に泣き崩れた。
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