序章

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 (なんでこんな事になっちまったんだろう…) そよりとも風の吹かぬ海。 動く事の無い帆船。 船べりに背中をもたれ、足を投げ出して座る彼。 今日、目覚めてから幾度となく繰り返す、同じ問い。 自分自身に、幾度も幾度も投げ掛ける。  (なんでこんな事になっちまったんだろう…) 繰り返す問い掛けは、何時から? 彼女を、……てしまった時から? 彼女を、失ってしまった時から? この海から、逃げ出す事が、叶わぬと悟った時から? 船が、この海に囚われた時から? 否、彼が“この世界”で目覚めた時から…。 何度も何度もなんども、繰り返して来た問い掛け。  (なんでこんな事になっちまったんだろう…) 誰も応えず、誰も答えを示さない。
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