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「先生ってさ、本物の先生じゃなくてアルバイトなんでしょ」 職員室で缶コーヒーを飲んでいたら、不意に耳元でそう囁かれてぎょっとした。 「な、なんだ川合か。どうした?」 コーヒーを吹き出す一歩手前で止まった俺は、精一杯教師ぶってそう答える。 「お兄ちゃんがいっていたの。塾講師なんてたいがいバイトだって。お兄ちゃんも塾講師のバイトしてるからさ」 そう言って川合は肩をすくめた。 先生の秘密知ってるんだぞ、とばかりに仕入れたての知識をひけらかす川合がすごく幼くて、俺は思わずニヤけてしまいそうになった。 「先生はみんな本物です。ほら授業はじまるんだから教室に行きなさい。」
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