序・戦士

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街があった。今でこそ草臥れ、廃墟にも等しい有り様だが、その規模を見るに、嘗ては栄え多くの人々が暮らしていた事が分かる。 銀に輝く高層ビルの群れが犇めき、その足下を整備された道がどこまでも続く。道路には流線型の車が走る。その脇には忙しそうに歩き回る人々が。そんな想像をさせる。 しかしそんな想像の先の生活があったのはもう十年近くも前の事で。今やこの街……強いてはこの国は最早、嘗ての面影を残していなかった。 建物は倒壊し、整備された道は砕け散っていた。人を運んで走っていた車に至ってはまるで爆発に巻き込まれたかのような状態の物が殆どで、中には横になって転がるものも少なくない。 目に見える物のほぼ全てが不可思議な傷跡を残して錆び付いている。風に運ばれてやって来たであろう塵や細かい砂が彼方此方に積もっているのを見ると、経過した時間も短く無さそうだった。 見るからに生物を拒絶する廃墟の街には、当然の様に生き物は居ない。動く物は無く、音すらも風の唸り声だけで不気味だった。 廃墟の街はただ時を経て、廃れて行くのみ。住人を失った街はポッカリと魂を抜き取られたようにぼうっと、そこに佇んでいた。 。
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