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TV画面の日付を見ると志奈が自殺した前日だった。
全てを諦めていると感じたのは、どうやら正解だったようだ。
秘密が何なのか気になるが、今はそれよりも志奈を追い詰めて殺した獣共だと自分に言い聞かせる。
獣共を見付けたら秘密も解るだろう…。
最後に妹はこう言った。
昔の市民体育館の倉庫から助けて…
と。
誰を助けろというのだろうか?
助けて…。
志奈のことでは無いのか?
…行けば何か解るかもしれない。
母さんに近付くとうつろな瞳に俺が写った。
俺はささやく。
無かったことにしよう、と。
ビデオテープは存在しなかった、そうだよね母さん?
母はコクリと頷く。
人間は嫌なことを容易く忘れてしまう。
志奈の自殺で混乱している母さんは簡単に忘れてくれるだろう。
それで良い。
出掛けてくると言って、薄い上着を持ち、家を出る。
歩きながらビデオテープのことを考えていた。
そういえば志奈の携帯が無い。
何故気付かなかったのか不思議なくらいだ。
もしかしたら志奈が捨てたのかもしれない…。
電車を一度乗り継ぎ、錆び付いた旧市民体育館に着いたのは夕方だった。
5つある倉庫を一つずつ開くか試していく。
開いたのは最後の倉庫だった。
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